装備一式。
特殊装備品として、虫除けスプレー(虫除け成分30%の国内最強品)、ハンモック(蚊や地上の外敵などから身を守る)、防水バッグ(リュック内の濡れを防ぐ)、浄水剤(ジャングルの水を浄化させて水分補給する)、アレルギー剤(虫刺されによる体調異常を防ぐ)などを準備。
予備のソックスも持っていくが、シューズが濡れたまま乾かないので予備は不要であった。
食料一式、約13,000kcal。
朝はドーナツや菓子など。レース中(日中)は胃の負担の少ない、完全食ドリンク(粉末を水に溶かして)とジェル。夜は満腹感のある焼きそば(ラーメン)をひとつ。
トータルエネルギーは全く足らないが、競争で余分となる食料は重くなるので持参しない。
いまだに未確認生物が存在すると言われる人類未踏のひとつ「アマゾン」。
その一角を5日間で230km走るステージレースに挑んだ。
幸先の良い初日にしようと勢い良くスタートするも、走り始めて20分もたたない内にコースを間違えてしまう。
「あー!やってしまった」
予想外のミスに、何とか遅れを取り戻そうと急いでコースを逆走していく。9kgのリュックを背負い、ここは標高約3,000m。走れば走るほど、息は荒れて、体は鉛のように重くなっていく。
だがレースなので歩いてもいられない。山を一気に降り、谷底に着くや次はすぐさま次の山を登り始める。すると事態は急変した。
酸素が体に回らず、目眩を引き起こし、もう歩くどころか立ってもいられず座り込む。
そこから徒歩と休憩を交互に行いながら、なんとか登り終えた時には、とうとう全身に痺れがまわり、その場で倒れ込んでしまったのだった。
どれほどの時間が経っただろうか。
休息してから再び走り始めるも、その日のゴールまで30kmの道のりは、ズッシリと足腰にのしかかるのだった。
走り終えた後も食欲は一切無く、ただ苦しみに耐えて夜を過ごした。
2日目からは、本格的にジャングルに突入した。
初日の疲れも癒えぬまま、朝7時半にスタート。降り続ける雨も相まって、川は濁流と化し、地面はぬかるみとなっていた。
幾十もの川を超えると、もう川に躊躇することも無くなってくる。
時には腰まで浸かり、時には滑って転ぶ。そして全身ずぶ濡れになって、5時間進み続けてようやく2日目を終えた。だが大変なのはここからだった。
本来なら夜は体を休める時間となるが、雨風をしのげる場所が無いのだ。
リュックもシューズも全身泥だらけになった中、唯一自由に使える場所が、自分のハンモックだけ。
「もう諦める!」
日本での生活感覚は捨てて、泥が付いていようが、虫がいようが、この不快感と不潔感が当たり前と思うようにして過ごした。
さらに3日目以降もアクシデントは次々とやってくる。
倒木や沼や川などを越える悪路を進んでいると突如、
「グキッ!!」
と鈍い音が…。左足首をグネってしまったのだ。故障中の右足をかばって、知らず知らずの内に左足に頼りすぎてしまっていたのか。
とにかく、踏み出すと痛みが出てしまい、テーピングと鎮痛剤で何とか庇いながら進むしかなかった。
すると今度は、暑さがやってきた。初日から標高は2,300m下り、天気は快晴となり、気温は25℃上がった。
この急な変化に体がついていかない。たまらず水分補給が増えるが、持ち合わせもなくなってしまい、とうとうアマゾンの水を飲むことにした。
「大丈夫か?お腹を壊さないか?」
そんな風に思いながら最初は浄水剤を使って飲んでいたが、何度も補給すると浄水剤を使う手間を省きたくなり、また案外飲めることも分かり、そのまま飲みはじめた。
それほど水を欲していたのだった。
さらに、ジャングルを進めば上からは虫が降ってきて、下からは蟻が登ってきて、横からは蚊やハエが飛んでくる。
少しでも止まって休もうものなら、体が虫たちに囲まれるのだ。
都度虫除けスプレーを使っては防御するが、中には虫除けでは効かないヘビにも遭遇した。
赤色、青色、グレー色。幸いにも逃げてくれたが、ヒヤッとする場面が何度もあった。
そんな苦労が絶えないレースであったが、結果、総合6位(36時間28分53秒)にてゴールを果たした。
満足できない順位ではありますが、アクシデントも重なる中でみなさんに力をいただき、無事に走り終えることができました。ありがとうございます!
今回の貴重な経験を糧に、次の大きな目標である「サハラ砂漠1000km」に向かってまたチャレンジしていきます!