装備一式。
極地ウェア、防寒用のオーバーシューズ(靴の上から履く)、ゴーグル、燃料、クッカー、保温ボトル、アイゼン、スノーシュー、GPS、バッテリー、ソリ補修テープなど、凍傷や遭難などの非常事態に備えて準備。
食料一式、約19,000kcal。
完全食(粉末)でエネルギー以外の栄養素を摂る。厚い手袋をしたまま食事ができるよう、ペットボトルん入る小粒食品を揃える。また食欲低下時に備えて、ジェルや羊羹なども持参。粉ジュースは、完全食ドリンクの味覚を変えて飽き対策。
2月24日午後2時、雲ひとつない快晴のもとレースは始まった。
-4℃という動けば汗ばむ気温の中、小さなアップダウンのある林道を進んでいく。
多くの選手たちはこのレースを何度か経験しているようだが、僕は初めてということもあり中盤で着いていくことにした。
コース上には新雪が積もっておらず、足がズボッと埋もれることはなかった。
だがそれでも進んでいるコースは、普段人が立ち入らない道。アスファルトのようにしっかりとした足取りとはまったくいかず、一歩一歩と足を沈ませながら進む。
さらにアップダウンのたびに、重さ15kgを超えるソリ(一般的な自転車ほどの重さ)に引っ張られ、足腰には大きな負担がかかってくるのだった。
そんな中で進み続けて11時間(深夜1時)。
川に到着。そこからは凍りついた川を北上していく。
すると気温が一気に下がり、露出していた肌が痛み、体が震えてくる。思わずソリに準備していた防寒ウェアを全身に装備。
そして寒さから身を守り温度計を確認すると、気温は-30℃まで下がっていたのだった。
「寒さは何とか大丈夫。でもこれが続くと辛いな。」
そんな風に思いながら進んでいく。まだ初日の夜のために眠気は我慢できるが、すでに他選手たちは見えない距離にまで離れ、暗闇の中をひとりだった。
そして2日目の午前10時25分(スタートから20時間半)、チェックポイント1(94km地点)に到着。
目標時間より早く着くことができた。
「良かった。」
とホッと一息をつき、2時間の休憩をとって眠ることなく再スタート。
次のチェックポイントまで50kmだ。そしてまた凍った川の上をひとり進んでいく。
だが、日が沈むと気持ちがガクッと落ち込むのだった。。。
眠気と疲労も徐々に辛くなってきて、特に精神がまいってきた。
19時に日が沈み、そこから夜が明ける8時までの13時間は真っ暗闇の中ひとり。
携帯電話は圏外だし、人影はもちろん、人工物などぬくもりの感じられるものはまったくない。
ただ、ライト1つで雪上に残っている前の選手の足跡を辿っていく。
もちろんずっと氷点下20~30℃の世界。
「あー、つらい。」
あと何kmなんだろう。。。コースは合っているのか。。。あと何時間耐えないといけないのか。。。
そんなことを考えだすと、どんどん辛くなっていく。もう止まりたいと弱気になってしまう。だが止まると凍えるように寒くなる。
その頃にはスタートから33時間が経過しており、幻覚もひどくなってきた。
合わせて意識も朦朧としてきたが、
「まともな意識で辛くなるなら、もうこの方がマシだ。」
そんな風にも思いながら、フラフラしながら歩いた。
そして3日目の午前3時(スタートから37時間)、チェックポイント2(144km地点)に到着。
一旦心身をリセットしようと、凍った衣類を乾かし、4時間仮眠をとることにした。
すると気持ちもずいぶん回復することができたので再出発をした。
16時間後(スタートから59時間半)にチェックポイント3(208km地点)に到着。ゴールまでは残り32km。
「足はかなりヘトヘトだが、今まで通りにいければ半日でいけるだろう。」
「最悪の場合は、外で休もう。」
そう思って、1時間だけ横になってから出発することにした。
疲労で体が言うことを聞かない。足の痛みがひどくて真っ直ぐに足を踏み出せない。ペースは大きく落ちている。
もういっぱいいっぱいの状態だったが、最後は気持ちだけで進んだ。
そして4日目の19時前(スタートから77時間前)、ついにゴールを果たした。
辛く厳しい挑戦でしたが、みなさんに応援をいただき、無事にゴールすることができました。ありがとうございます!!
寒さ、暗さ、孤独。まだまだ自分の弱さが現れてしまいます。
さらにソリを曳いて歩くということにめっぽう弱い。
ですが目標の560km、1,600kmへ挑むためにも毎日を無駄にすることなく、成長していきます。